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スワップ派のためのFXポートフォリオ 入門編

07. 相関係数 その2

目次

7-1. 相関係数なんて必要ないの? その1
7-2. 相関係数とは その2
7-3. 相関係数とは その3
7-4. 相関係数とは その4


7-1. 相関係数なんて必要ないの? その1


前回の終わりに、次回その2はいよいよ最適化の話か!?

と期待されていた人は、同じような気分を味わうかもしれません。最適化の話はまだ当分先になります。ただし、これからの話を理解しないと最適化のことは分かりません。

本題です。

「相関係数とは」とタイトルに書いてしまったので、その話をしなければなりません。ここで、相関係数とは‐1から1の間の値をとって、0は無相関、±1は完全相関といい・・・などと説明しても無意味(とまでは言いませんが)です。

こんな説明なら“Wikipediaで相関関数”と検索して見れば十分でしょう。要するに、分かっている人は分かるし、分からん人は分からんという説明ですね。

(これからしばらく数式が出てきます。めんどくさい人は、読み飛ばしてください。)

で、相関係数を説明する前に、どうしても、分散標準偏差の話に立ち戻って考える必要があります。ただ、少々、数式が出てきますので、ちょっとだけ我慢してください。Logとか積分とか偏微分とかのへんちょこりんな記号はでてきませんので。

ポートフォリオのリターンは加重平均で求めることができました。



でも、標準偏差はこんなに簡単にはいかないようです。ここで、新しい記号を導入します。σで標準偏差を表します。また、σの2乗は分散となります。この記号を使うと、



は、一般には成り立たない。

と書き表せます。(「一般には成り立たない」、とは常に成り立つわけではないと言う意味です。)

標準偏差は分散の平方根でしたので、一段階ほど分散よりも複雑な式となっています。そこで、しばらく分散で考えて見ましょう。

ポートフォリオの分散も個々のペアの分散の加重平均とは異なる値となります。そこで、ちょっとしたアイデアを導入しましょう。もし、何らかの調整項を導入して、



と表すことができれば、そして、調整項を容易に求めることができれば、ポートフォリオの分散が簡単に計算できることになります。

この調整項の正体はいったい何になるのでしょうか。

ところで、個別通貨ペアの分散の前のウエイトwが突然2乗になっているじゃないか。と気がついた人もいると思います。でも、適当に2乗をつけた訳ではありません。

3-3.ランダムさの尺度その3で分散の計算をするときには、リターンを2乗するとしました。それゆえ、リターンの前にウエイトをつけた場合は、ウエイトも2乗されてしまいます。

ウエイト付きのリターンを仮にvとおけば、



です。

次回に続きます。


7-2. 相関係数とは その2

今回も数式が出てきますが、とばしてもらってもOKです。実際、細かい数式は分からなくとも、結果の使い方を正しく認識していれば、利用者としては十分なのです。

ただ、ちょっとばかり今後の都合もあって、相関の導出を書いておく必要があるので、興味のある人だけお付き合い願います。

予備知識として、中学で習った公式



を復讐じゃなかった復習しておけば、以下の数式は追えるはずです。

ポートフォリオのリターンは



でした。これを2乗してみましょう。



うぅ、頭が割れそうだ、やめてくれ。と声が聞こえてきそうです。

この式、どこかで見たことありませんか。
前回書いた、ポートフォリオの分散の式



と似ています。rとσを交換すればそっくりです。ウエイトも2乗になっていますね。となると、調整項は



のような形になることが予想されます。これ、ほとんど正解なのですが、ちょっと違います。肝心なものが抜け落ちています。

数式ばかりで、わかりづらいかもしれませんが、もともと、相関係数は数学的な概念なので、どうしても言葉だけでは正確には説明し切れません。もうすこし、お付き合い願います。

何度も書きますが、分散の定義はリターンを2乗して平均をとりました。式で書くと
(以下 r の平均は0とします。)



となります。要するに、1期からT期までrの2乗を足し合わせてTで割った、つまり、平均を計算したという意味です。
ここで、先ほどの式



を分散の定義式に放り込んでみましょう。うじゃうじゃと項があって大変ですが、整理すればやさしくなります。結果はこうなります。



ついに、調整項の正体が明らかになりました。



式を追ってくれた人、お疲れ様です。ついにここまで来ました、もう一歩です。

式を書くほうも疲れます。はぁ。

次回に続きます。


7-3. 相関係数とは その3

今回も数式が出てきます。めんどくさい人は読み飛ばしてもらっても平気です。
前回、最後に出てきた式の以下の部分のことを共分散といいσabと書きます。



分散の定義式とにていますね。r2の代わりのrabとしただけです。ra=rbとすれば、分散と同じになります。

つまり、分散とは、同じもの同士の共分散である、ということもできます。そして、この式はAとBの何らかの関係を表すと考えても良さそうです。

これから、この共分散の性質を調べてみましょう。と簡単に書きましたが、これを分かりやすく説明するのはかなり困難です。

ベクトルやらcosθやら使えると直感的な説明ができるのですが、数学が不得手の人には、ますます訳が分からなくなるだけで、どうにもなりません。

ここで数式をつかった説明を書いてみたのですが、あまり意味がなさそうなので省略します。

とりあえず、共分散と標準偏差との関係を先に書いておきます。(追記1)



共分散の絶対値は、互いの標準偏差の積よりも小さい値となります。そして、



つまり、共分散をそれぞれの標準偏差で割った値を相関係数と呼びます。

共分散は、raとrbの関係を表しますが、raやrbの標準偏差の大きさによって値が変化してしまいます。(標準偏差が大きいほど共分散も大きくなります。)

相関係数とは、共分散をそれぞれの標準偏差で割って、それらの大きさに左右されないようにした値です。つまり、raとrbの相対的な関係のみを表した数値と言えます。
たとえば、



となることがわかります。(この関係は共分散の定義式からすぐに導出できます。)

数値自体の読み方は、ほとんどの方はご存知なので簡単に書きますと、(追記2)

   ‐1    : 完全逆相関 raとrbは常に反比例関係が成り立っている。
    1    : 完全相関  raとrbは常に正比例関係が成り立っている。
    0    : 無相関    raとrbは無関係に変動する。
‐1<ρ<0 : 逆相関    raが大きいとrbは小さい傾向となる関係がある。
 0<ρ<1 : 順相関    raが大きいとrbも大きい傾向となる関係がある。

相関係数はグラフでプロットするとイメージできますので、近いうちにグラフの例をアップします。

2回ほど、数式ばかりでややこしかったのですが、途中はどうでもよいので、



だけ覚えておけば十分でしょう。
この式をつかって、後ほど実際にエクセルでポートフォリオのリスクを計算してみます。

次回からは、あまり数式がだらだら出てくることはありませんので、普段のペースに復帰できそうです。

次回に続きます。

(追記1)


(追記2)
完全相関は比例関係と書きましたが正確には線形関係です。
また、相関係数が0であるから2つの変数は無関係である、とは言えません。非線形関係等の相関係数では表せない何らかの関係がある場合があります。


7-4. 相関係数とは その4

相関係数について分かったことを整理しましょう。

・ポートフォリオの分散は、リターンの計算と違って単純に加重平均では計算できない。

・ただし、共分散を導入することによって計算することは可能。

・共分散は、各期の各通貨の互いのリターンの積の平均値となる。

・共分散を各リターンの標準偏差で割った値を相関係数という。その値は‐1~1の値をとる。

・相関係数は各リターンの標準偏差の大きさには影響されず、相対的な関係を表す。

・各リターンの標準偏差を一定とした場合、共分散の大きさは相関係数で決まる。つまり、ポ ートフォリオの分散は相関係数の値が異なると、異なる値をとる。

・相関係数はお互いのリターンが常に等しいときに最大値の1、常に反対(逆符号) のときに最小値の-1をとる。それ以外の場合は、‐1~1の間のさまざまな値をとる。(追記)

・相関係数は、各リターンが同じように動く傾向があるときはプラスの値、反対に動く傾向があるときは、マイナスの値をとる。

さて、相関係数の正体が見えてきました。

以上をまとめます。

ポートフォリオの分散は、
個別通貨ペアの分散と組入れウエイトが一定の場合でも
リターンの相関係数の値が異なると、
異なる値をとる。


いままで飛ばし読みした人も、これは覚えたほうがいいでしょう。正直、このまとめだけ覚えておけば、今までの式展開はどうでも良いことです。

次回は、実際にエクセルで計算してみましょう。

(追記)
相関係数が1となる条件はもう少しゆるく

です。
また、相関係数が‐1となる条件は

です。


08. 相関係数 その3へつづく

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