スワップ派のためのFXポートフォリオ 発展編
目次
19-1. Varの簡単なはなし その1
19-2. Varの簡単なはなし その2
19-3. Varの簡単なはなし その3
19-1. Varの簡単なはなし その1
VaR(バリューアットリスク)と言う単語は聞いたことがある人も多いと思います。
リスク管理と言っても、標準偏差での計測とVaRでの計測にはどんな関連があるのか、ネットで調べてもいまひとつよくわからりません。
結論から書いておきます。
VaRとは、
1. 前回まで説明したリスク金額と同様な考え方で、
2. リターン分布形については、特に前提を置かない、
リスク管理手法です。
このブログでは
リスク金額 = 投資金額 × リスク
(ここでリスクは標準偏差)
としました。
そして、リスク金額以上の損失が発生する確率は約15%程度であることがわかりました。(スワップによる収益は除きます。)
ここで、別の見方をして見ましょう。
15%の確率に対応する損失金額が「リスク金額(=投資金額×リスク)」であるならば、
例えば、
10%の確率に対応する損失金額はいくらなのでしょうか?
5%や1%の場合の損失金額はいくらなのでしょうか?
と考えてみるのです。
そして、そのような考え方から求めた金額をVaRと言います。
当然、確率が小さい方が損失金額はおおきくなります。
たとえば、正規分布を仮定すれば5%の点は1.64σですので、リスク金額の1.64倍となります。前回の例で言えば、
16万5千円以上の損失の発生する確率は5%
ということになります。同様に1%では23万3千円となります。
(片側5%点は1.64σ、片側1%点は2.33σ)
VaRなどというと、難しい金融工学のはなしに聞こえますが、意味合いは簡単です。
次回は、正規分布以外の場合について考えて見ます。
19-2. Varの簡単なはなし その2
VaRとは、損失が発生する確率を先に決めて、その確率で発生する損失金額を表示するものでした。
具体的には、
この投資は、1%の確率で10万円以上損する可能性がある。
というような考え方でリスク管理をしたいわけです。
正規分布を仮定した標準偏差によるリスク管理との関連では、
次の表1を使うとリスクをVaRに換算することができます。
表1:正規分布の場合
VaR |
85%VaR |
90%VaR |
95%VaR |
99%VaR |
確率 |
15% |
10% |
5% |
1% |
リスク倍率 |
1.036 |
1.282 |
1.645 |
2.326 |
5%の確率で損失する金額を知りたいとき
(このようなときのVaRを一般には「95%VaR」といいます。)
投資金額×リスク(=標準偏差)×リスク倍率
で計算できます。
たとえば、1000万円のポジションでリスクが7%のとき
95%VaR=1000万円×7%(=0.07)×1.645=115万円
となります。つまり、5%の確率で115万円以上損失が発生するということです。
ところで、表のリスク倍率とは何でしょうか。
たとえば5%の列では、1.645となっていますが、これは1.645σという意味になります。
また、
リスク(=標準偏差)は1σの値でしたので、その値に表のリスク倍率をかけてやれば、その確率で発生する金額に換算できます。
ここで、式を分解して考えて見ましょう。
リスク(=標準偏差)×リスク倍率
に注目してみます。今回の例では、7%×1.645=11.5%
です。この11.5%は、5%の確率で起こりうる損失側の資産の変化率になります。
よって、
95%VaR = 投資金額 × (5%の確率で起こりうる損失側の資産の変化率)
と言えます。
ここのところは、ちょっとややこしいのですが、VaRの本質の部分ですのでよく理解してください。
もう少し一般化すると
X%VaR = 投資金額 × (100‐X)% の確率で起こりうる損失側の資産の変化率
となります。
これは、より一般的なVaRの定義です。
この定義からは、正規分布や標準偏差という言葉がなくなっています。つまり、正規分布以外の分布を持つ場合においてもVaRは計算できることになります。
たとえば、分布の合成で調べたように、裾の厚い分布の場合でも分布の形状さえ決めれば、VaRは計算できます。
分布は正規分布以外のなんらかの分布関数を用いてもよいですし、ヒストリカルリターンの分布を用いてもかまいません。
次回は具体的にVaRを計算してみましょう。
19-3. Varの簡単なはなし その3
最後は、VaRの具体的な計算をする方法です。
ヒストリカルデータを使ってやってみましょう。
つまり、実際の過去のリターン系列からVaRを求めてみる方法です。
ヒストリカルVaRの求め方は簡単で、ヒストリカルのリターンデータを作成して、小さい値から数えて1%の点がVaR99%に相当、5%の点がVaR95%に相当する値です。
100日のリターンデータであれば、
最も小さいリターンがVaR99%
小さい方から5番目のリターンがVaR95%
に相当するリターンです。
VaRにするには、このリターンの絶対値に金額をかければよいわけです。
例えば、USDJPYが1ドル100円で1万ドル保有していて、
過去100日間で一番小さいリターンが-3% ならば、
VaR99% = 3%×100万円(1万ドル) = 3万円
ということになります。
つまり、1%の確率で1日に3万円の損失が発生するということです。
では、実際にエクセルでやってみましょう。
こちらで用意したツールではなく、皆さんお持ちの普通のエクセルシートです。
ご自分のPCにエクセルがインストールされてる方は立ち上げてください。
今回は、USDJPYを例にとって見ます。
1000日分くらいのデータを使いたいのですが、大変ですので100日分のデータを使います。
なお、ヒストリカルデータはYahoo等から入手してください。
まず、101日分のUSDJPYのレートを用意します。
101日分にしたのは、リターンデータにする必要があるので、1日分余分にデータが必要だからです。
では、エクセルのシートにデータを貼り付けましょう。
図1
C列はUSDJPYのレートです。D列にそのリターンを計算しました。
計算式は、シートの数式バーを参照してください。
※ =C102/C101-1
リターンのD列を値でF列コピーします。
リターンを小さい順に並べ替える必要があるのですが、数式の状態で並べ替えると上手く行きません。
D列を選択してコピーをしてから、F1を選択した状態で右クリック-「形式を選択して貼り付け」を選んでください。
ダイアログの貼り付けのフレームで「値」を選択してください。
図2
値コピーされました。任意で数値表示は%表示にしてください。
図3
F列を選択して降順に並べ替えます。メニューの[データ]‐[並べ替え]を選択すると、ダイアログが出ます。
図4
降順にならべ変えた結果です。100番目のリターンがVaR99%の値に相当、96番目のリターンがVaR95%の値に相当するリターンとなります。(小さい方から数えると1番目と5番目だから)
図5
今回の例では
VaR95%は、-1.54%
VaR99%は、-2.01%
となりました。
もし、USDJPYのポジションが円換算で100万円ならば
VaR95% = 1.54%×100万円 = 15400円
VaR99% = 2.01%×100万円 = 20100円
となります。
とても簡単に求まります。
今回は100個データでやりましたが、実際にはもっとデータ数を多く使ったほうが良いでしょう。
20. ポートフォリオの最適化へつづく
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