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スワップ派のためのFXポートフォリオ 発展編

12. √Tルール

目次

12-1. ルートTルール その1
12-2. ルートTルール その2
12-3. シャープレシオとルートTルール


12-1. ルートTルール その1


第一章入門編:03.ランダムさについて調べる3-3.ランダムさの尺度その3の中で標準偏差(ボラティリティ)の年率換算について軽く触れましたが、それをこれから解説したいと思います。

まず最初にボラティリティの年率換算についてです。

「√Tルール」(るーとてぃーるーる)。 

聞いたことありますか?
聞いたことのある人は、BS式などのオプション理論を勉強したことのある人でしょう。

要するに、ボラティリティ(標準偏差) は、時間が経つとどのように拡散してゆく(広がってゆく)かの話です。時間がたつと標準偏差の数値は大きくなります。

USDJPY=100円とすれば、翌日は100円±1円くらいですが、
1年経てば、100円±10数円くらいです。不確定の幅が大きくなっている、つまり、1日あたりの標準偏差よりも1年あたりの標準偏差はかなり大きくなります。

具体的な数値で例を挙げてみます。
(以下、標準偏差は一定(時間が経っても一定)とします。)

1日あたりの標準偏差が1%の通貨ペアがあります。
この通貨ペアの2日間の標準偏差はどのくらいになるのでしょう。
また、1年間(260営業日)だとどのくらいでしょうか。

答えを先に書きますと、

2日間では、1.41%くらい
1年間では、16.1%くらい

となります。

この計算方法ですが、
1日あたりの標準偏差×日数の平方根(ルート)
で計算できます。

上の例では、それぞれ、
1%×2のルート=1%×1.41=1.41%
1%×260のルート=1%×16.1=16.1%
という訳です。

この計算方法を「√Tルール」といいます。

これは、良く使うことなので覚えておくと便利です。
一番良く使われるのは、標準偏差の年率換算に使われます。

普通、ボラティリティはりターンの1年当たりの標準偏差で表します。
ある通貨ペアのボラティリティが10%である。
とは、通常、その通貨の1年間リターンの標準偏差は10%である、という意味になります。

つまり、年率以外の単位の標準偏差を求めた場合は、年率に換算してやる必要があります。

さて、ある通貨ペアの1年分(260日) の日次リターンが手に入ったとします。この通貨ペアのボラティリティ、つまり、1年間リターンの標準偏差を計算するにはどうすればよいでしょうか。

1年間のリターンがたくさんあれば、それから標準偏差が計算できます。

しかし、データは1年分しかないので、1年間リターンは最初の日と最後の日の価格から計算した1データしか取れません。これでは、標準偏差は計算できません。

そこで、日次データを260個使って日次リターンの標準偏差を求め、それを√Tルールを使って年率換算するのです。

たとえば、日次データで求めた標準偏差が0.7%であれば、
1年間の標準偏差は0.7×√260=11.3%
となります。

これならば、たとえ1ヶ月分(22日)のデータしかなくとも、年間あたりの標準偏差を計算できます。日次で計算した標準偏差に√260をかければよいことになります。

ここで、問題です。週次リターンから計算した標準偏差を年率換算するにはどうすればよいでしょうか?

次回につづきます。


12-2. ルートTルール その2

週次のリターンから計算した標準偏差の年率換算のやり方です。
1年間は約52週間ですので、求めた標準偏差に√52をかけてやればよいことになります。

たとえば、
週次リターンの標準偏差が2%と計算されたならば、年率換算した標準偏差は
2×√52=14.4%
となります。

日次リターンの標準偏差を年率換算するときの考え方と同じですね。
日次ですと年間営業日が260日くらいなので√260をかけます。
週次ならば、年間で52週なので√52をかけます。

ここで、気をつけることは、日次リターンの標準偏差を年率換算するときの日数は営業日(為替が取引される日) の日数を使う必要があることです。というのは、1年間の日次リターンは260個だからです。

一方、週次では、1年間の週次リターンは52個ありますので、√52を使います。

ちなみに、もし、日本市場の日次データから標準偏差を求めて年率換算する場合は、年間の営業日は247日くらいなので、√247をかけます。(年によって多少前後しますが、それほど気にする必要はありません。)

以上で、ルートTルールの使い方は分かったと思いますが、どうして、このような関係が成り立つのでしょうか。

以下、多少数式が出てきますので、興味のある方だけお読みください。

ルートTルールが成り立つ条件として、リターンの自己相関(系列相関)がないという条件が必要ですが、為替のリターンには自己相関はほとんどありません。自己相関については2-5.為替の自己相関係数を参照してください。

また、リターンの累積は、本来ならば掛け算となるので対数リターンに変換した上で説明する必要がありますが、本質的な意味は同じとなるので、その変換は端折ります。



次回は、ルートTルールとシャープレシオの関係について書きます。


12-3. シャープレシオとルートTルール

FX投資のリスク(標準偏差)は、時間の経過とともに√Tに比例して大きくなってゆくことが確認できました。

(以下、本来ならば対数リターンで説明をする必要がありますが、本質的には同じなので対数変換は端折ります。)

1年当たりの予想リスクがσであれば、T年間あたりの予想リスクは
σ×√T
で計算できます。

2年では約1.4倍、4年で2倍、9年で3倍・・・
です。(予想リスクが一定であることが条件ですが。)

下図の赤い線は経過月数とリスクの関係を表しています。1年当たり10%の予想リスクの通貨ペアの予想リスクと経過月数の関係を示しています。

図1


ところで、もう一本青い線が引いてあります。年率10%の期待リターンと経過月数との関係です。期待リターンの場合は直線になりますね。

1年当たり10%なら当然2年で20%、3年で30%・・・です。(複利については無視してください。)

1年当たりの期待リターンをrとすれば、T年間の期待リターンは
r×T
となります。

期待リターンは時間に比例、予想リスクは時間のルートに比例して大きくなることが分かりました。
さて、期待リターンと予想リスクが出てきましたので、やっぱり、シャープレシオの登場です。

シャープレシオは時間の経過とともにどうなるでしょうか。

シャープレシオ=期待リターン/予想リスク
でしたので、上の式を代入して、

シャープレシオ=(r×T)/(σ×√T)=(r/σ)×√T
となります。ここで、r/σは、1年間でのシャープレシオ

つまり、
時間の経過とともにシャープレシオは√Tに比例して大きくなってゆくことが分かります。

図示してみましょう。

図2


スワップ狙いのFX投資では、もし、スワップリターンとリスクが変化しないとすれば、投資期間を長期にするほど、シャープレシオが大きくなる、つまり、有利な投資ができることになります。

これが、巷で言われている、「長期投資をしましょう。」ということの理屈です。

実際の長期投資では、当然、スワップリターンもリスクも時間の経過とともに変化してゆきますので、ポートフォリオの調整が必要になります。

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1年間の投資でシャープレシオを2以上にすることは相当に困難です。

でも、

4年間投資すれば、シャープレシオを実質的に2以上にすることは困難ではありませんね。


13. 分布のはなしへつづく

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