スワップ派のためのFXポートフォリオ 発展編
目次
15-1. スワップ派のための相関係数 その1
15-2. スワップ派のための相関係数 その2
15-3. スワップ派のための相関係数 その3
15-4. スワップ派のための相関係数 その4
15-1. スワップ派のための相関係数 その1
発展編の最終話です。
入門編から当サイトでは相関係数について多くのページを割いて説明しています。ここではその相関係数についてもう一度詳しく説明したいと思います。
相関係数は、数学的な概念なので数式が使えれば一瞬で説明が終わってしまうのですが、文章で説明するとかなり困難です。
このブログ連載時から、わかりやすく説明してるつもりですが、やはり、私の力量が不足しているのか、色々な説明がわかり辛いとのご指摘を受けることがあります。
そこで、今回は相関係数を別の切り口から説明してみます。
投資家にとって「リスク」とは何か?と、根本に立ち返って考えます。
それは、
「損失をするかもしれない。」
と言うことになります。
重要なのは「損失」ではなく「かもしれない」と言う部分です。
「損失するに決まっている。」ならばそんな投資をするはずが無いので、リスクとは言えません。逆に、奇妙な投資家がいて「どうしても損失をしたい。」ならば、利益が上がることがリスクになってしまいます。
つまり、投資した結果が「あらかじめわからない」ことをリスクと見なすことが、自然な考え方と言えるでしょう。
次に、リスクをどうやって測るか、の段階になります。
これは、決まったやり方があるわけではなく、投資家によって都合の良い方法を使えばよいのです。
たとえば、短期トレーダーにとっては、指標のサインが、あらかじめ当たるか外れるかわからないので、当たり外れやその損益の比率をリスクをあらわす数値であると考える方が都合がよさそうです。
そこから、プロフィットファクターのような考え方も出てきます。
仮に、トレードしている資産の標準偏差をリスクとして考えるならば、頓珍漢なことになってしまいます。そもそも、短期トレーダーにとっては、資産は変動しなければ利益を上げることはできません。
資産の変動、つまり、標準偏差がある程度あってこそのトレードであり、標準偏差がほとんど0である銀行預金でトレードする人はいないでしょう。
スワップ派にとっては、何をリスクとすればよいのでしょうか。
当然、スワップがリスクになることはありません。投資する前にほぼ確定しているからです。
確定していないものは将来の為替レートになります。
為替レートは変動しており、どのように動くかはあらかじめわかりません。それならば、その変動の大きさをリスクと捕らえることが、自然な発想となります。
そして、その変動の大きさを表すときに「標準偏差」という非常に便利な統計学の考え方を借りてきているのです。「標準偏差」でなければいけない、と言うことではありません。
別の考え方を使っても一向に差し支えないのです。便利なので標準偏差をリスクの尺度として使っているだけです。
続きます。
15-2. スワップ派のための相関係数 その2
標準偏差をリスク計測の道具として使うと決めるとします。どうやって、標準偏差を計算すればよいのでしょうか。
為替の場合、通常、過去データから
「為替レートの変化率(リターン)の標準偏差」を使います。
これは、他の方もそうしています。実際、これで良いのですが、では、どうして「為替レートの変化率」で標準偏差を計算するのでしょうか。
「為替レート」の標準偏差では間違っているのでしょうか。
これは実は極めて重要なことになります。
「為替レートの変化率の標準偏差」
「為替レートの標準偏差」
どちらが、スワップ派がリスクとして使うのに都合がよいのでしょう。
これは、まともにやろうとすると数理統計や時系列モデルの話をしなければならなく、ちょっとややこしくなるので、例をあげて説明します。
ここに、毎日、必ず1%ずつ上昇する変わった性質を持つ為替レートがあったとします。初日にレートが100円とすれば翌日は101円、その次の日は102.01円、100日後は270円くらいになります。(複利計算が必要なので200円ではありません。)
この為替レートのリスクはどうなるでしょうか。毎日、為替レートの動きは確定しているので、リスクは0と計算されるのが都合が良いでしょう。
初日のレートを100円として100日間で計算して見ましょう。
「為替レートの変化率の標準偏差」では常に変化率が一定なので0と計算されます。リスクは0と都合の良い結果が出ました。
一方、
「為替レートの標準偏差」では、0ではなく約50円と計算されてしまいます。パーセント換算すれば日次で50%となり、むちゃくちゃリスクが高いことになってしまいます。これでは使い物になりません。
(銀行預金ですら、リスクを持つことになりますね。)
つまり、レートから計算した標準偏差は、レートが規則的な動きをしていたとしても、レートの値自体が変化すれば、大きな値を持ってしまうのです。
と言うわけでリスクとしては、
「為替レートの変化率の標準偏差」を使うのがよさそうです。
実際、プロの投資家では、変化率の標準偏差を使うことが常識です。
(上記の話はあくまでも簡略な説明です。統計に詳しい人いましても突っ込まないでください。)
続きます。
15-3. スワップ派のための相関係数 その3
単独での通貨ペアの場合のリスクの計測方法はきまりました。
では、複数の通貨ペアが含まれているポートフォリオの場合は、どのようにリスクを計算すればよいのでしょう。
単独の通貨ペアの場合と同様に考えて、
「ポートフォリオのポジション額の変化率の標準偏差」をリスクとすればよいでしょう。
「ポートフォリオのポジション額の標準偏差」では、「為替レートの標準偏差」のときと同じ問題が発生してしまいます。
次に、「ポートフォリオのポジション額の変化率の標準偏差」はどうやって計算するか、を考えなければいけません。
ここで、ようやく相関係数が登場します。
計算の途中段階に相関係数という項が出てくるのです。
つまり、
「ポートフォリオのポジション額の変化率の標準偏差」を計算する過程で出てくる相関係数の項はどのように計算されているか、を調べてみれば
「変化率の相関係数」と「レートの相関係数」のどちらを使うべきかは、明確にわかります。
相関係数というものが前面に出てきて
「レート変化率の相関係数」と「レートの相関係数」のどちらを使うのが良いのかと考えるのではなく、
ポートフォリオのリスクをどのように計算するかが決まってしまえば、自動的に相関係数の計算方法も決まってしまうのです。
そして、その計算方法は「為替レートの変化率の相関係数」となります。
(ここでは、式展開は省略します。)
これが、レートの変化率の相関係数を使う理由です。
詳しくは、
当サイト入門編の相関係数関連の部分を読み返してみて下さい。
続きます。
15-4. スワップ派のための相関係数 その4
ポートフォリオのリスク計測では、「ポートフォリオのポジション額の変化率の標準偏差」とすることが、わかりました。
では、簡単に式展開の概略を説明します。
AとBの2つの通貨ペアのポートフォリオのポジション額の変化率の標準偏差は、
「Aのレートの変化率の標準偏差」
「Bのレートの変化率の標準偏差」
「AのレートとBのレートの変化率の相関係数」
「Aのウエイト」
「Bのウエイト」
の5つの値から計算することが可能です。
一方、
ポートフォリオのポジション額の標準偏差の計算をしたいのであれば、
「Aレートの標準偏差」
「Bのレートの標準偏差」
「AとBのレートの相関係数」
「Aのウエイト」
「Bのウエイト」
で計算できます。
よく紹介されているのが、相関係数だけレートとなっていて、
「Aのレートの変化率の標準偏差」
「Bのレートの変化率の標準偏差」
「AとBのレートの相関係数」
「Aのウエイト」
「Bのウエイト」
で計算するようにしているものです。さすがに、これは無茶苦茶としか言いようがありません。
私としては、ポートフォリオのリスク計算から離れて、単純に2つの為替ペアの関係を見るために「レートから計算した相関係数」を使うこと自体を否定してはいません。なんらかの参考になるかもしれません。
ただ、レートから計算した相関係数はあまりにも不安定で信頼性に欠けるので、参考情報としても使うことも、あまりお勧めできません。
詳しくは、
9-4.正しい相関と誤った相関 その具体例を参考としてください。
リスク分析のために使う相関係数の計算を資産変化率の系列から求めるのは、プロの世界では常識です。
個人投資家の為替の世界だけが、なぜか「為替レート(価格)から計算した相関係数」がよく紹介されています。どうしてこんなことになっているのか、ちょっと不思議に思っています。
発展編は以上です。入門編で書き漏らした事柄などを中心に基本事項を少し発展させてみました。次からは実戦編へと移ります。
第三章 実戦編
16. ウエイトって?へつづく
TOPへ |
|
序 章
第一章 入門編
第二章 発展編
第三章 実戦編
以下、続きはブログ゙で連載中
別 章
その他
著者ブログ開発ツールなど
究極のFXポートフォリオ構築ツール
無料お試し版もあります^^。 |
yamakouFX氏による人気ブログ最近記事はこちらで読めます。 |
ミ ニ 伝 言 板
|